V−FETフラットアンプの製作 

<製作のきっかけ>2003/03/19   2003/04/10更新

 安井式V−FETフラットアンプを製作するために、数年前にV-FET 2SK79を2ペアー購入していたのを、前回のV-FETパワーアンプに使用して失敗したので、フラットアンプとして完成させようと製作にかかりました。

DAC内蔵コントロールアンプ

内部構成は向かって左側に電源部、フラットアンプとIVコンバーター用にタンゴCT-10トランス2個(プラスマイナス電源に各1個)、DAC用に汎用トランスを左奥に設置、中央左前にDAコンバーター基板、中央右寄りにフラットアンプ基板が左右チャンネル各1個、ツマミは左端電源スイッチ、中央テープモニター、大きいツマミがボリューム、右端がセレクターとなっています。

<設計コンセプト>

予算が無いので既存の安井式コントロールアンプのフラットアンプのみ交換する。したがって同じサイズのユニバーサル基板にフラットアンプを組み込む。

安井先生のV−FETフラットアンプのオリジナル回路は単一電源の無帰還1段増幅のシンプル回路で魅力的なのですが、既存のフラットアンプの電源は±2電源で、将来金田式フラットアンプと入れ替えて音質比較をしてみたい等、電源部は±2電源のままのほうが都合が良いので、初段に差動アンプを使用したDC負帰還アンプにしました。

今まで使っていた安井式上下対称フラットアンプはカップリングコンデンサーに積層セラミックコンデンサーを使っているのが音質的に問題なのではと思っていたので、積層フィルムコンデンサーによるシルキーキャップコンデンサーもどきを自作して使用する。またオフセット電圧の安定度が良ければカップリングコンデンサー無しの直結にしたい。

V−FET SRPP回路はゲインが小さくNFBアンプにした場合トータルゲインが不足するので、初段差動アンプは高ゲインの2SJ72を使用し、最大定格電圧が25Vと低いので2SJ103を使用したカスコードアンプとする。

<アンプの仕様>

回路構成

安井式V-FET SRPPフラットアンプ+初段2SJ72差動アンプ

使用部品 アンプ部

初段差動アンプ2SJ72+カスコードアンプ2SJ103

2段目SRPPアンプV-FET 2SK79

2SJ722SK79は若松通商のペア選別品を使用

抵抗はアッテネーターの入力33KΩはスケルトン抵抗、負荷抵抗は進抵抗、NFB抵抗はタンタル抵抗

バイパスコンデンサーはWIMAのフィルムコンデンサー、カップリングコンデンサーはシーメンスの積層フィルムコンデンサーを使用

使用部品 電源部

安井式定電流定電圧電源、定電流回路2SK117、ツェナーダイオードHZ24L

<回路図>

フラットアンプ回路

初段は2段目のソース抵抗を小さくするために負荷抵抗を560Ωと小さくしたので、なるべく高ゲインとなるように2SJ72の順方向アドミッタンス40mSが得られる2mA程度の電流を流します。定電流回路2SK117Idss2本で12mA程度にしています。

2段目 SRPPアンプの上側2SK79はゼロバイアスで4mA程度の電流となるソース抵抗(220Ω)とし、下側2SK79のソース抵抗を半固定抵抗としてオフセット電圧を調整します。(上下のFETが同じ電流になったとき出力は0Vになる)

上側V-FET 2SK79のソース抵抗はあらかじめFET24Vの電圧をかけて半固定抵抗で4mAに調整したときの抵抗値に近い固定抵抗とします。

安定化電源はツェナーダイオードと定電流FETを使用した安井式定電流定電圧回路とし、定電流回路のFET2個で13mA程度の電流になるようにしています。(フラットアンプに10mA、ツェナーダイオードに3mA流れる計算になる)

また左チャンネルマイナス側電源のツェナーダイオードのノイズが左チャンネル出力に出たのでマイナス側ツェナーダイオードにバイパスコンデンサー0.1μFを入れています。(1個だけノイズの大きいやや不良品だったようです。代わりが無いのでコンデンサーを入れてノイズを抑えました。)

<アンプの製作>

プリント基板はユニバーサル基板サンハヤトのICB-88Gを使用しました。フィルムコンデンサー3個が大きいので余裕はありません。

最初の設計では初段は2SJ103のみの差動アンプでした。その場合初段のゲインは1倍程度となり仕上がりゲインを3倍に抑えて、カップリングコンデンサー無しの直結にするつもりでした。

しかし最大出力電圧が3V程度しか出ないこと、今までのフラットアンプの仕上がりゲイン30倍から落としすぎて音量不足など、ゲイン不足なので最近金田式DCアンプで出番が無い手持ちの2SJ72を使用することにしました。

2SJ72は窪田式アンプのパワーアンプやプリアンプの初段にも使用されていた名石でやっと出番が回ってきました。

2SJ72だと初段のゲインは10倍程度取れるので、フラットアンプの仕上がりゲインを6.7倍にして約20dBNFBになると思います。最大出力電圧も10V以上とれるようになりました。

出力のオフセット電圧は5分ぐらいで±10mV程度に安定するが、パワーアンプと直結で使用するには長期的には不安なのでカップリングコンデンサーを入れることにしました。

フラットアンプ基板

旧フラットアンプ基板を撤去するついでにDACというデジタルノイズ発生源があるので、セレクターからフラットアンプの配線と出力ピンジャックまでの配線をPCOCC単線にトライガード巻きで行っていたのをPCOCCの2芯シールド線に変更することにしました。

旧フラットアンプ基板

カップリングコンデンサーはMJ無線と実験のシルキーキャップコンデンサー自作方法の解説を参考に作ってみました。

(1)積層フィルムコンデンサーのリード線は圧着してあるだけで簡単外れるので、取り外して好みのリード線を半田付けする。(圧着部分が音質劣化原因のひとつ)

(2)積層フィルムコンデンサーをガラス板、セラミック板又は金属板ではさんで絹糸できつく縛ってエポキシ接着剤でコーティングして固める。(コンデンサーの電極振動を抑えて音質劣化防止)

以上のような内容だったのですが、私の場合適当なガラス板やセラミック板が用意できなかったので、リード線はPCOCCのより線を使用して、絹糸で直接コンデンサーを縛り、手持ちのFRP補修キットのガラス繊維とエポキシ接着剤で固めた上から銅箔テープを巻いて仕上げました。フラットアンプ基板の写真、右端白い四角い形のものが自作したコンデンサーです。不安定なので銅箔テープで3つのコンデンサーをつないで固定しています。

音質については今までの積層セラミックとの差を感じることはできませんでした。(フラットアンプが違うと比較が難しい)

<調整>

このアンプの調整箇所は2段目 SRPPアンプの下側2SK79の半固定抵抗によるオフセット電圧調整のみです。アンプが温まるまで10分程度かけてオフセット電圧を0Vに調整します。(5分ほどで±10mV程度に安定する)

電源ON直後はオフセット電圧が瞬間的に100mV程度になるのでパワーアンプ直結にする場合ミューテイング回路を付けた方がよさそうです。

カップリングコンデンサーを入れるとミューテイング回路無しでもスピーカーからのポップノイズは気になるほどではありません。

<問題点>

完成後さっそくヒアリングしてみると、無信号時に左チャンネルから大きめの残留雑音が出ました。右チャンネルは無音なので,FETの不良かアースラインがノイズを拾っていると考えて初段のFETの交換や、アースラインの検討をしてみましたが効果ありませんでした。

数日悩んで、回路図を見ているとツェナーダイオードが電源ラインに直接はいっているのが気になりました。ツェナーダイオードのノイズが原因ではと思い、フィルムコンデンサー0.1μFをツェナーダイオードに並列に接続してみるとノイズが消えました。

安井先生のオリジナル回路では電源の時定数をなくすためコンデンサーは入れない方が良いとありますが、ローノイズのツェナーダイオードを使用する必要があるようです。ツェナーダイオードは余分に買っておくべきでした。

予備のツェナーダイオードが無いので、ノイズの出ない右チャンネルも左右同じとするためにフィルムコンデンサーを入れました。

<測定と試聴>  

混変調歪率はプリアンプの場合ノイズを拾いやすく正確に測定できなかったので、パワーアンプ込みで測定しましたが、パワーアンプ単体の測定と差はほとんど無かったので良しとしました。オシロスコープの波形観測でも特に問題はありませんでした。

音質的にはV-FETパワーアンプと同じ高音よりのバランスで、より高域が強調される傾向になった気がします。低音量でも細かいところまで聞き取りやすいメリハリのある音質です。

フラットアンプの交換はパワーアンプを変えた時ほどの音質の変化は無く、以前とほとんど変わらないわずかな変化と言えそうです。

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