V−FETパワーアンプの製作 

<金田式V−FETパワーアンプ>2000/07より製作開始

 秋葉原からV−FETが手にはいらなくなって、ソニーのV−FET、2SJ18だけ売っていた数年前、V−FETの音が2度と聞けなくなると思って急に欲しくなって4個だけ購入しておきました。

金田式完全対称回路なら2SJ18だけでもある程度の音質が得られるのではと考えて設計にかかりました。

V-FETパワーアンプ(上左側)

<設計コンセプト>

25年ぐらい前に買ったタンゴのA-30S(A級15Wステレオ用電源トランス)をはじめ、ストックしたまま使っていない部品をなるべく使うようにする。

手持ちのアンプが真空管アンプ2A3シングルとMOS-FET A級ステレオで消費電力が大きく夏場は温度上昇が激しく、音楽を聴くのがつらいので、夏用に消費電力はなるべく小さいアンプにする。(出力10W AB級ステレオ程度)

大きなアンプは時代遅れと世間では思われているようなので、小型のアンプにする。ケースサイズ(230W×200D×115H、ゴム足除く)

出力段V-FET

<アンプの仕様>

回路構成

金田式完全対称回路

使用部品 アンプ部

初段差動アンプ2N54652段目差動アンプ2SK2402段目定電流回路2SJ76、終段V-FET 2SJ18

使用部品 電源部

出力段のみ定電圧電源2N3055,MJ2955、トランス タンゴA-35-S ドライブ段+40V、−28V、出力段±20V

最大出力

ステレオ 9W+9W

 

<回路図> 2012/08/17 回路図修正(RD20F位置)

vfetampアンプ部

+側終段2SJ18のバイアス電圧は+30V以上必要なため、+電源を40Vとしています。

RD20Fは2SK240の耐電圧が40Vであること、V−FETのバイアス間の電圧が20Vあることから、2個の2SK240にかかる電圧をそろえたいので入れています。

 

 

電源部

終段2SJ18のみ定電圧電源とし、2SJ18を保護するため各V-FETごとに過電流防止の保護回路を付けています。

V−FETはゼロバイアスで最大電流が流れるため、定電圧ダイオードRD22Fに100μFのコンデンサーを付けて、終段の電圧立ち上がりが遅くなるようにしています。

 

20011月 ケース底板の加工

 製作を始めて半年過ぎましたが、パソコンやデジカメ・バイクなど他の趣味に興味が行ってしまい、製作は全然進んでいません。冬になって外に出るのも辛くなって来たので、そろそろ製作を始めようと思っています。

シャーシベースとヒートシンク、電解コンデンサ

 

200111月 ケースの加工

 今年中に完成したいと思いシャーシの加工を始めました。フロント、リアパネル共アルミ板の厚さが2.5mmぐらいあり、リアパネルは穴が多い上にスピーカー端子とヒューズホルダーは楕円形の穴なので時間がかかりました。ケースはタカチのSL115-20-233を使用しています。

200112月現在の製作状況

前面のインスタントレタリングを固定するレトラコート101のガスが抜けて使えなくなっていました。東京にいた頃に買ったもので、25年ぐらい前の製品ですが去年までは変質も無く使えました。新しくレトラコート101を探してみましたが見つからず。サンハヤトのレタリング固定剤を広島の松本無線パーツで購入しました。使用感はレトラコート101のように自然な感じに仕上がらず、見る角度によっては粉を吹いたように見えるのは少し不満です。

シャーシ加工の様子

シャーシの穴あけはハンドドリルで4ミリの下穴をあけ、シャーシーリーマーで穴を大きくして楕円の穴は丸棒ヤスリで広げていきました。

現在はプリント基板のパターンを検討中です。

 

20023月 電源部の製作

ケースの加工が終わったので、まず電源部から製作を始めました。

電源部は終段のV−FETのみ安定化電源として電流制限式の保護回路(左右別2.7A)を付けました。電源部のパワートランジスターはケース裏板に取り付けてケースを利用して放熱するようにしています。

電源基板は電源のケミコンと接近しているので、プリントパターンの検討はせず部品配置優先で先に部品を差し込んでから回路図を見ながら配線作業を行いました。

電源基板と配線

電源基板の下にパワートランジスターを付けています。

ケース上部より見た電源部

ケース内部はかなり狭く配線作業は難しそうですが、タカチのケースは各面が分解できるので何とかなりそうです。ケースの左右の空きスペースにヒートシンクとアンプ基板が入る予定です。

<今回の作業の問題点>

1ヶ所抵抗の足を折り曲げただけでハンダ付けを忘れていた部分がありマイナス電源が作動しませんでした。プリントパターンを検討していなかったことと、ハンダのふくらみの近くで判り難く発見まで30分ぐらいかかりました。

電源のパイロットランプのハンダ付けをケミコンの放電がされていない状態でしたために、LEDを飛ばしてしまいました。

今回は電源のケミコンの端子がネジ式なので、電源部は全て圧着端子を利用して配線することにしています。ネジの締め付けをケミコンの放電がされていない状態でしたために回転してプラスとマイナス端子がショートしてバチッとスパークさせてしまいました。金田式アンプでは圧着端子にカバーを付けており、私も付けようと思います。

結論としてケミコンは20Ω程度の抵抗で放電してから作業するようにしないと、部品を壊してしまいます。

 

20028月 アンプ基板の製作と完成

電源部が完成してから、病気入院や仕事が極端に忙しかったりでアンプ製作はしばらく中断して、アンプ基板のパターン検討や回路の再検討などをしていました。

アンプ基板検討図

生活に少し余裕が出来て製作意欲がわいてきたので、72829日の土日を利用して一気に完成させました。

<アンプ基板の製作>

アンプ基板はケースの両サイドに入れるので部品の配置は左右対称にしています。

ケースに余裕が無いのでMFBコントロールは立型半固定抵抗にして、アンプ基板に組み込みました。

アンプ基板(R/L)

基板の1/3が放熱器にかかるので部品を残りの2/3に配置するのに苦労しました。

初段の定電流回路のFETは放熱器の真上に配置して終段アイドル電流の温度補償をするように考えて離れた位置にしています。

部品はNFB抵抗と終段位相補正はスケルトン抵抗、その他の抵抗は進工業RE55とし、初段差動アンプ2N54652段目差動アンプ2SK792段目定電流回路2SJ76、終段2SJ18という構成です。

基板が狭いので終段V-FETのソース抵抗、ゲート入力抵抗は省略しています。そのほうが音質的にも好ましい結果になるのではという理由もあります。

配線コード接続前の基板配線

今回はハンダに無鉛銀ハンダを使ってみました。鉛入りと比べてそれほど使い難くはありませんでした。

<内部配線作業>

配線は電源部の端子盤とケミコンに圧着端子でビス止めするようにしています。

部品配置と配線

ケースサイズが230W×200D×115H(ゴム足除く)と小さいのでケースを広げないと調整作業が出来ないので配線は長めになってしまいました。

出力段V-FETと基板の配線

天板を開けて上部から調整出来るような方向にMFBコントロールの半固定抵抗を取り付けています。

<完成と調整>

とりあえず配線が終了したので、さっそく調整作業に入りました。しかし出力オフセット電圧が0Vにならないので、電源電圧を測ってみると定電圧電源のマイナス側が-Vぐらいしか出ていませんでした。

アンプ基板接続前は-20V出ていたので、原因を探してみると、電源のツェーナーダイオードRD22Fに電流が流れていませんでした。定電流回路の2SK117を取り替えて配線をやりかえると直りました。4ミリピッチのユニバーサル基板の場合、太目の電源コードだと隣の配線と近すぎてコードがわずかにショートしていたのが原因か、単純なFETの不良か、どちらかはっきりしませんでした。

完成アンプ内部

アンプ内部が狭いのと、天板以外に放熱孔も無いので、アイドリング電流は少な目の200mA以下にしました。それでも真夏のためかV-FETの放熱器はけっこう熱くなっています。

出力DCオフセット電圧は温度上昇にともなって、0〜80mV程度変動しています。

<測定と試聴>

オシロスコープとオーディオアナライザーで最高出力を測定すると、クリッピングポイントは約10Wと設計どおりの結果が得られました。(終段電源電圧±20V

スピーカーをつないで試聴してみると、無音時にノイズが気になりました。ハム音より少し高い周波数のノイズで、ピンプラグ片チャンネルだけ接続だと出ないので、ピンコードがノイズのアンテナになっている感じです。

アースポイントを電源ケミコンの左右に分けて、中点をアースしたのが1点アースになっていなかったようです。マイナス側のケミコンの端子に左右のアンプ基板のアースを接続して、そこからケースにアースすることで実用上支障の無いレベルのノイズになりました。しかしスピーカーに耳を近づけると、2A3シングルアンプよりやや大き目のノイズなのが不満です。

電源ON、OFFのショックノイズはほとんどありませんでした。

完成アンプ後部 vfet14 後部上面より

白いアルミ板は定電圧電源のトランジスターのショート防止カバーです。

試聴はCD再生やDVDでアニメ映画を再生して行いました。音質的にはある程度のレベルには達していると思われるので、じっくりチューニングしてみるつもりです。

音質的には高音よりのバランスで宇多田ヒカルのアルバム(Distance)では真空管アンプに比べると高域がうるさく感じられる。MFBコントロールで調整できればと思うが、変化はわかり難くベストのポイントを探すのは時間がかかりそうです。

<完成アンプの問題点>

今は調整中で天板を付けていないのにV-FETの放熱器はけっこう熱くなっているので、天板を付けるのがやや不安でアイドル電流を160mA程度に押さえています。(音質的には300mAぐらい流したい。)

左チャンネルの初段FETにゲート漏れ電流があり、入力オープンだと出力に0.30.5V DC電圧が出るのが気になっています。(左チャンネルだけ温度上昇にともなってDCオフセット電圧が20〜80mVと大きく変化する)

アンプのゲインが少ない為か、MFBコントロールのダンピングファクター変化範囲が24程度と小さいので付けた効果が少ないかも。(MFBコントロールは他のアンプに無い機能なので音質の変化を確認したい。)

 

20029月 完成アンプの調整作業

<完成アンプの問題点の解決>

(1)歪の改善

アンプ完成後にオーディオアナライザーIM-48で混変調歪率を測定してみると、出力1Wで1.5%、5Wで2.5%程度と歪が多いので、原因を考えてみました。

オーディオアナライザーIM-48とアンプ

金田式完全対称アンプはドライブ段の出力インピーダンスが高くないと、終段のプッシュプル動作がアンバランスになって歪が多くなると金田氏は製作記事に書かれています。

ドライブ段のV-FET 2SK79は内部抵抗が低く、電源電圧の変動で電流が変化する性質は出力インピーダンスが低く、金田式完全対称アンプのドライブ段には向いていないようです。電流帰還抵抗を増やしたり、無しにしてNFB量を増やしたりと色々調整してもダメでした。電源電圧が+40V、−28Vと低いのでカスコード接続にも出来ないのでドライブ段のV-FET使用はあきらめました。 

結局手持ちのFETのストックから、2SK240を代わりに使うことにしました。20Vのレベルシフト用ツェナーダイオードを使っているので最大定格電圧40Vを超えず、高利得でトータルゲインが60dBぐらいになってNFBが40dB程度かけられるので低歪になるのではと期待しました。

結果は出力1Wで0.06%、5Wで0.5%(Rch)と混変調歪率は改善されました。押し出しの強い明るめな音質の傾向は変わらず、高域のうるさい感じはだいぶ押さえられました。最大出力は9W程度と1W低下しました。

(2)ノイズの低減

無信号時にスピーカーに耳を近づけるとジーという高周波性のノイズが気になります。オシロスコープで波形を観測すると100KHz程度の正弦波が観測され、方形波応答波形の水平部分が正弦波で波打っていました。

終段のV-FET 2SJ18のゲートに抵抗220Ωを入れたり、位相補正は2段目のゲート、ドレイン間に5pFのみだったのを初段出力にステップ型位相補正を入れたりと色々調整してみても変化が無いのでアースラインを見直してみることにしました。

シャーシアースは電源ケミコンの中点をアースしていましたが、金田氏の製作記事に習いLchの入力ピンジャックのアースからにしました。特に改善されなかったのでオシロスコープを見ながら電源配線を動かしてみるとノイズ波形が変化するので束ねたり離したりしてワイヤリングを変えてノイズの少なくなる配線方法を探しました。

結論は電圧増幅段の電源ラインとアースラインはケースに添わせて配線し、出力段の電源ラインは電圧増幅段の電源ラインとアースラインからは離して配線するとノイズ波形が小さくなりました。

出力段のプラス側左右の電源ラインをより長く密着させてから左右に分けるとノイズが打ち消されるようなので、出力段のプラス側配線のみ密着部分をトライガード巻きにして結束バンドで止めました。

配線変更後のアンプ内部

配線変更後は無信号時にスピーカーに耳を近づけても何も聞こえなくなりました。

あと気になっているのは左チャンネルの初段FETのゲート漏れ電流が大きいことですが、2N5465の代わりが無いので2SJ103に変えようかとも思いましたが左右チャンネルで初段FETが違うのも気にいらないので、しばらくそのままとしていました。

しかしV-FETフラットアンプの製作の過程でノイズに悩まされ、問題点解決の一つとして左チャンネルのみ2SJ103に交換しました。ゲート漏れ電流は無くなり、音質的にも問題ないようです。

<今回の失敗談>

アイドリング電流とDCオフセット電圧の調整はケースを広げないと出来ないので、基板ぐらぐら状態で調整中に出力トランジスターのヒートシンクとドライブ段の定電流用FET 2SJ76の放熱板をショートさせてしまい、2SJ76と定電流回路のツェナーダイオードを壊してしまいました。

ショートした瞬間バチッと音がして火花がでて、出力に−20vの電圧が出たときには、もう手に入らない出力段のV-FETを壊してしまったとガックリしました。しかし調べてみると定電流回路だけが壊れていたのでほっとしました。

それからはむき出しの2SJ76の放熱板にセロテープを貼って絶縁して調整するようにしました。しかしちょっと気を抜いてテープを貼り忘れて、また同じ所をショートさせて再び壊してしまったときは情けなかったです。

  

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