ラジコンカー専用急速充電器の製作(H8マイコン使用)

<きっかけ>

トランジスタ技術20044月号付録のH8マイコン基板でLED点灯や温度計の試作を行い、温度計の状態でしばらくそのままにしていました。

電動ラジコンカーのバッテリー充電を秋月の急速充電器キットで行っていましたが、バッテリーの本数が9本となり1Aの充電器ではラジコンに行く3日前ぐらいから充電を始めないと間に合わず。土日2日連続で遊べないので、2台目の充電器をH8マイコンの試作基板を利用して製作することにしました。

電動ラジコンカーのバッテリーは充電が完了してすぐに使用すると最高のパワーが得られるらしく、上級者はサーキットで充電して走らせています。バッテリーの電圧は充電直後から時間とともに下がり続けています。充電直後のバッテリーは確かにパワーがあるので4A以上の急速充電器はラジコンのステップアップにはぜひ必要です。

ラジコンもリチウム電池に移行してきたので、201010月にリチウムフェライト(リフェ)対応にバージョンアップしました。

H8マイコン急速充電器

20111月更新:Li−Feモードスイッチ、10分モード、+10分スイッチ追加

上部に充電容量、充電電圧、デルタピーク電圧、2段目に充電時間、充電電流、充電モードを表示する液晶ディスプレイを取り付け、正面左よりリセットスイッチ、Li−Feモードスイッチ、充電表示ランプ1、電流切り替スイッチ、10分モードスイッチ、充電表示ランプ2+10分スイッチ、充電用タミヤコネクターを取り付けています。

<充電器の仕様>

充電できる電池

7.2Vニッケル水素電池・ニッカド電池、6.6Vリチウムフェライト電池

急速充電電流

充電開始から5分(リフェ1分)まで0.9A又は1.5A、以後3.5A又は4.0

トリクル充電電流

10mA自動停止無し

充電完了検出方法

デルタピーク電圧検出:ニッカド-70mV、ニッケル水素-50mV、リフェ電圧7.25

充電停止タイマー

標準40分、+10分スイッチで10分ごとに加算、10分スイッチで10分にセット

使用マイコン

ルネサステクノロジ H8/3694F

ディスプレイ表示

充電容量、充電電圧、デルタピーク、充電時間、充電電流、充電モード(MH又はLF)

電源

4.0A以上のACアダプタ又は車のシガーライターソケット

マイコン開発ソフト

トランジスタ技術付録ルネサステクノロジHEW3.0HtermFDT3.1 C言語使用

<設計方針>

実験用マイコン基板をそのまま利用し、ユニバーサル基板の空きスペースに充電回路を増設する。

ニッケル水素バッテリーの性能が生かせる4.0A充電とし、充電開始から7分まで0.91.5Aの準備充電期間をつくる。

ラジコンカー専用なので操作部分メニュー方式ではなく、切り替えスイッチだけ、充電端子もタミヤコネクターのみとして操作ミス、接続ミスがないようにする。

予算が無いので手持ちジャンク部品をなるべく利用して、新規購入部品を少なくする。

地方に住んでいるのでトランジスターは手持ちのストックを利用しています。定電流回路が1.6Aと2.4Aで違ったり、トランジスターが違ったりするのは手持ち部品利用の制約です。マイコンの5V安定化電源を使用する1.6A回路の方が合理的で良いと思います。

Li−Feモードの切り替えを忘れてもバッテリー電圧でニッケル水素電池とリフェ電池を自動的に判断するプログラムを組んでいますが、1分後に判断するため満充電状態のリフェ電池を誤って接続した場合はニッケル水素電池と判断され過充電となりバッテリーが壊れます。LF表示を必ず確認することが必要です。

<回路>

マイコン学習プログラムのLED点灯プログラムの出力ポート(P81,P82)を充電のON-OFF制御に利用し、内蔵ADコンバーター(PB0〜PB3)で充電電圧、デルタピーク電圧、充電電流を検出して充電制御を行っています。

ニッカド・ニッケル水素とリフェの切り替えは汎用入出力ポート(P14)の電圧レベル(5V又は0V)で行っています。

最近ニッケル水素電池の容量が増加して70分で充電しきれなくなったので、LEDの抵抗68Ωを切り替えて0.9Aと1.5Aに電流を変えられるようにしました。

充電電流の調整はLEDを利用した定電流回路を2組(1.5Aと2.4A)作り、充電開始から5分まで1.5Aのみ動作させ、6分以後2.4Aも動作させて4.0Aの充電電流にしています。LEDは充電表示も兼ねています。(P81,P82の電圧レベルがHで消灯、充電停止)

充電制御のトランジスターは8-40Wと5-40Wの手持ちジャンクを使用しています。ケースの空きスペースが小さく小型の放熱器しか付かなかったので、2組に分けてトランジスター1個あたりの負荷を軽減しています。

トリクル充電はマイコンで制御すると複雑になるので、バッテリーが接続してあれば2SK246BLの定電流回路から常時10mA流れるようにしています。

ブートモード用回路はマイコンにソフトを書き込むとき使用し、リセット回路はスタートボタン又はマイコンのリセットに使用します。

ブートモードのスイッチは普段使用しないので充電器内部の基板上に取り付け、リセットスイッチは押したときのみONになるスイッチにします。

ADコンバーター(PB0、PB2)は入力電圧がマイコン電源電圧5V以下になるように抵抗で電圧を下げています。

急速充電器回路

    回路図はキャラクタ液晶とRS232Cの配線を簡略化しています。トランジスタ技術2004年4月号又はH8/Tinyマイコン完璧マニュアル(CQ出版社)を参照して下さい。

また10分モード、+10分スイッチは回路図作成後設置したので記入していません、充電モードとスイッチの接続方法は同じです。接続端子はメインプログラムを解読してください。

<製作>

ケースはタカチのアルミケース18x13x4cmを使用し、電源はパソコン電源を改造してDC12VのACアダプターを製作しました。

充電回路の放熱器が小さいのでアルミケースの表面も利用して放熱するように考えています。ケースは放熱器の上下に放熱用の穴を開けています。

充電してみると放熱器とケースはかなり熱くなっているので、小型の放熱器では電源電圧を12V以上にすると危険です。

キャラクタ液晶は基板スペーサーの高さを調節してアルミケースの開口部に合わせています。

急速充電器内部

右側放熱器は小さい方が1.5A、大きい方が2.4A用トランジスター、液晶表示は左上充電容量、右上電圧、左下充電経過時間/充電タイマーセット時間、右下充電電流を表示しています。

ニッカド電池は充電完了近くで電圧が10V以上になるため、12V電源だと電流が4Aから2A程度まで下がります。ニッケル水素電池では9.3V程度までしか上がらないので4A充電が最後まで続きます。写真は実験中の物なのでタイマーは50分にセットされています。

マイコン実験基板(改造前)

マイコン実験基板の右下の空きスペースに充電用定電流回路を組み込んだ。

<マイコンプログラムの作成>

急速充電器のプログラムはトランジスタ技術2004年4月号のマイコン学習プログラムの割り込みを利用したLED点灯プログラムに2チャンネル簡易電圧計のプログラムを組み込んだ物をベースに充電器に必要な機能を少しずつ加えながら作成しました。

まずLED点滅動作と2チャンネル簡易電圧計が同時に動作するように、HEW3でLED点灯プログラムを開き、メモ帳で2チャンネル簡易電圧計のプログラムを開いて必要部分をコピーしてHEW3に貼り付けて、完了したらビルドを行います。プログラムの記述にエラーがあるとビルドが完了しないのでエラーが無くなるまで、記述を修正します。LED点灯プログラムには液晶表示のC言語ファイルが無いので、2チャンネル簡易電圧計の4ビットLCD表示Cファイルをプロジェクトに追加し、Sectionのメモリアドレスを調整する必要があります。

 Sectionのアドレス設定画面

メニューのオプションからH8/Tinyより入る。画像は最終ROM書き込み設定(モニター用は異なる)

プログラムの作成はHtermを利用し、機能一つを加えるごとにプログラムをビルドしてモニター・プログラムで正常に機能することを確認しながら、ビルドを繰り返しながら少しずつ作成しました。

<プログラムの概要>

市販品高級機のように電池の状態をチェックしながら最適な充電プログラムを設定する。ということはC言語プログラム初心者には無理なので、あらかじめ設定したプログラムの通りに充電を実行するようにしました。液晶表示で充電状態がチェックできるので異常は人間が判断して対処することにします。

LED点灯プログラムの変更点は1秒ごとに点滅する設定を変数Timerに1分ごとに1を加えて充電時間を作り出すこと及び1分ごとに充電容量を計算して変数mahに加えて延べ充電容量を1分ごとに更新することです。

2チャンネル簡易電圧計のプログラムの変更点は電源電圧、定電流回路の電圧、1.5A及び2.4A定電流回路の電流の4チャンネル入力にしたことです。ADコンバーターは10ビットなのでマイコン電源電圧4.99V1023分割した4.877mVをADデータに掛けて電圧を算出します。PB0、PB2は入力に抵抗を入れて電圧を下げているので約6mV15mVを掛けて補正しています。

バッテリーの入力電圧は電源電圧より定電流回路の電圧を引いて算出し、電流は定電流回路のエミッタ抵抗の電圧をエミッタ抵抗で割って算出しています。

充電条件はIF文と変数の列記で作り出しています。

作成したメインプログラム

<使用しての感想>

バッテリー入力電圧を電源電圧より定電流回路の電圧を引いて算出しているので、デルタピークの感度が最大21Vの精度になっているのはやや不満です。電源電圧の変動も検出するので電源が不安定でも21mVより悪くなることは無いでしょう。

ニッカド電池もニッケル水素電池もデルタピーク電圧を検出しての自動停止は問題なく作動しています。デルタピーク電圧-60mVだと充電が途中で終わることがあったので-70mVにしています。ニッケル水素電池は充電完了近くで高温になるので50分過ぎからデルタピーク電圧を-50mVにして感度を上げています。

ニッケル水素電池は20002400mAhを使用しており、2000mAhが満充電になる40分に充電時間をセットしています。容量が大きい3800mAh+10分スイッチ押して70分にセットしています。

10分モードはレース直前の追い充電用に付けています。

 

ホームページに戻る

inserted by FC2 system